津山で因美線に乗り換えて40分ほど、それまでの盆地の風景から山々に分け入った中に列車が停車した。
ホームから少し歩いた先に駅本屋があり、よく来たねと迎えてくれたような気がした。
通路のかすれた文字に、かつてあったのであろう構内入換え作業の活気を想像する。
駅舎は高台にある。国道と人家は数段下った先となるため、駅の周囲に人の温もりは感じないが小型の市営バスが1台発車を待っていた。程なくして乗客の居ないまま発車してしまうと、ここに居るのは自分ひとりだけとなってしまった。
多角形にせり出した出札窓口、ガラス戸を通して事務室内がよく見える。その規模は遠く及ばないものの、旧大社駅のそれに雰囲気が似ているように思えた。
締め切ったままの扉にカレンダーが1枚。その月のものがきちんと掲げられていることからも、この駅が人の手により面倒を見ていただいていることが判る。道理で駅舎内は清掃が行き届いており不快感はない。木壁の美しい木目を眺めながら、折り返しの列車を待った。
(2023/2/18)