那岐駅から津山行きに乗り、再び岡山県に戻る。美作河井駅のひとつ先、前回の旅での車窓からその佇まいを見て、降りたい衝動に駆られた知和駅に着いた。
この駅もまた車の通る道から奥まった所にあり、駅の周囲には人家も無い。自販機も電話ボックスも無い、郵便ポストも小型の壁掛けのモノ。この駅に通う人の少なさを如実に物語っているようだ。
西日が駅舎内にグッと差し込んでいる。ガラス窓を通して事務室内の様子が窺えた。手入れの行き届いた駅舎内を眺めていると、今にも駅員さんが一人出迎えてくれそうな気がした。
しんと静まり返る駅。次の列車が到着するまでは暫く時間がある。
不意に風が通り抜ける。パタパタとカレンダーが風に舞った。
先ほどまでの夕日が山の向こうに消えると、夕暮れの青味が刻々と増して行く。
ホームから一段下がった所にある改札口。このほんの僅かな距離と時間が、列車旅の余韻を持たせてくれそうだ。
(2023/3/12)
京都府の山陰本線に「和知」という名の駅名がある。ここ「知和」の文字をみると「わち」と言ってしまいそうになるが、ここは真逆の「ちわ」だ。