線路端のブログⅡ

高架化されても、高いフェンスに遮られても、やっぱり線路端が好き・・・。

北恵那鉄道 -1-

 先ごろ転轍器さんのブログで北恵那鉄道に触れられていた。(こちらの記事)ワンカットのみのご紹介だったが、その写真を拝見しながら廃止間近の夏の終わりに訪れた日のことが一気に蘇って来た。

 あの頃の北恵那鉄道は訪問しずらいことで有名だった。朝と夕方そして夜しか走っておらず、昼間に出掛けても乗れないし走る電車の写真も撮れないのだった。

 策を練り信州を旅した帰り道を中央西線から名古屋経由とし、長野からの夜行急行で早朝4時に中津川に着くという方法に行きついた。

 朝の列車は上り3本、下り1本という変則。その下りに乗って終点まで行って折り返すとそこで朝の列車は終わりとなるので、乗るのは諦め撮影を主眼とすることにした。

 駅から15分ほどの木曽川に架かる国道の橋から川原に降りて、上り1番とその折り返し下り1番をスナップした。

 国道に戻り先に進むと人家と畑の間にホームが見えた。恵那峡口駅だった。ホーム1本に簡素なトタン吹きの日よけのみ。恵那峡下りの観光船乗場への入口とは到底思えない侘しさ一杯だった。

 木立の奥から上り2番電車が来る。正面3枚窓の中央に運転士の姿が見えた。

 正面からでは分かり難かったが、その側面には翌月に控えた廃止の日に向けてのモール装飾がなされていた。

 草茫々の線路を進んで木立の先まで行ってみると、棚田が広がり木曽川を遠目に出来る眺めの良いカーブがあった。朝の清々しい空気の中で上り3番列車を待った。

 さて、朝の列車はこれで終わった。中津町に帰ろうにも足は無い。今来た道を歩いて戻るしかなかった。国道の橋まで戻ると団体の臨時なのだろうか、客を一杯乗せた下り電車がゴトンゴトンと鉄橋を進んで来るのが見えた。

 

中津町駅に戻る。

 一見すると役場のような堂々とした佇まいの駅本屋。

 軒先には「ながいあいだ ありがとうございました」の文字。

 

 朝の運転が終わり、動きの止まった駅構内の車両たちに目を向ける。一通りスナップを終えると、あまりの暑さに耐えかねて駅を出て、近くの大手スーパーに逃げ込みエアコンの効いた館内で一息ついた。そこは全国展開のチェーン店だったので、今、普段の買い物に寄った地元の店に居るかのような気がした。(続く)

(1978/8/27)